平田オリザ氏 (劇作家演出家/青年団)
 前作、『あこがれ』を拝見しました。太宰治の『斜陽』が原作になっていると、前もって聞いてはいたのですが、いやいや 、そのストレートなぶつかり方に、爽やかささえ感じたのでした。題名もストレートだし。
■ で、今回は、題名が『青年の恋』ということで、「いくつだよ山田裕幸」と思ったのでした。でも、よく見たら再演なんですね。昔から年寄り臭かったのか。いずれ文学の話でもゆっくりしましょう。次回作を観てからね。期待しています。
宮城 聰氏 (演出家/ク・ナウカ シアターカンパニー代表)
■ 山田裕幸の最大の美点は、おそらく「バランス」にあると思われる。だからそのバランス感覚が生かされる作品において、ユニークポイントは成功する。
■ たとえばガーディアンガーデン演劇フェスの10分プレゼン。あるいは近代文学を 原作とするもの。こうした、はっきりした「枠組み」を課せられているとき、そして 作り手の「思い入れ」を抑制する「外部」が存在するとき、山田裕幸の手腕は光を放つ。
■ 見えるものへはバランスを。見えないものにはオフバランスを。そしてこの両者の あいだにもバランスを取る秘技を、山田はなぜかちょっと知っているらしいのだ。
衛紀生氏 (演劇評論家)
■ 月に二、三本は若い演劇人たちの舞台を観ることにしている。何の収穫もない年も あるが、今年は早くもユニークポイントという集団と出会うことができた。『あこがれ』という舞台である。なによりも科白のやりとりが断然によい。無駄を削ぎ落としているのである。面識 はないが、山田裕幸という才能に可能性を感じてならない。
■ 十年と少し前に、二十歳 そこそこの柳美里という作家の舞台に遭遇したときと同じ「感じ」なのだ。舞台そのものにはまだ荒削りというか、空間の処理に工夫が必要と思われるが、そ の科白の感覚とそれを膨らませる演出の作法に、並々ならぬものがあるように思えてならない。
■ 今後しばらくは目の離せない集団になりそうである。
堤広志氏 (小学館『せりふの時代』編集スタッフ)
■ 山田さんの作品には、いつも戸惑いを覚える。
 例えば『カンガルーと稲妻』では、夫婦の気持ちの擦れ違いが不倫疑惑を生み、刃傷沙汰に発展した。しかし、加害者の夫は悪びれず平然としていて、妻はそんな彼を微笑みで迎えるのだ。
■ 『アンダーグラウンドカフェ』では、学生運動が再燃する近未来、セクト間抗争が激化する大学で、イギオロギーによって恋人を教化し従わせようとする男と、運動に“女の体”を提供し、逆に誤解されてしまう女の、愛の平行線を描いていた。
■ 今時珍しく真っ向から“恋愛”を描き、しかも本質的に相容れない、男と女の立場を見据えようとしている。次回作はずばり『青年の恋』とのことだが、おそらくその字面のイメージからは程遠い、気まずく痛い愛の形が示されるのではないだろうか。
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